自由研究と少年の野心

今週のお題「自由研究」

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私が児童のみぎり、タスクは並列性をもって実施するのではなく、集中的に行うシングルタスクによってのみ最適な効率化がはかれるものであり、時間という制約がある中では、それこそが選択すべき唯一のソリューションであると考えておりました。

要は、夏休み前半はとにかくエンジョイ。中盤になって、だんだん宿題が気になりはじめるのですが、見ないようにしておけば無くなるのではないかという超楽観主義で乗り切り。8月30日くらいになって ようやく取り組み始めるものの、真夜中まで泣きながらやったところで二日三日で終わるものではなく。結局、始業式に間に合わず。「宿題をうちに忘れて来ました」という透明度100%のウソをついて精一杯のアディショナルタイムを作り出し。9月4日くらいに、それっぽいものを提出。というのを毎年毎年、繰り返しておりました。

 

私が小学生の頃の夏休みといえば「アイス、プール、スイカ、マンガ、花火」と毎日が楽しく輝いている日々で、夏休み終盤までは宿題や自由研究が入り込む余地がありませんでした。その後、受験を経験し競争社会に入り込んでいくと、夢見る少年じゃいられなくなり、恋心を覚えてトラブルメイカーになり、カラーセラピストを経てスピリチュアルに傾倒して國學院大學に入っちゃうのは、相川七瀬さん(本名:佐伯美咲さん)の話でしたね。失礼しました。

 

そんな(どんなだ?)私が、小学4年生の時だったと思うのですが、「早めに宿題を終わらせておけば、後はゆっくり夏休みを楽しめる」と、ない頭で思いつき、夏休み開始と共に宿題に取りかかるという、今考えても、かなり似合わない計画を実行したことがありました。

 

そこで自由研究として採用したのが「植物採集」でした。理由は2つあって。その当時、児童に配られていた「夏休みの友」という冊子で、自由研究の例として「押し花」があったことでした。なんとなく「これをやれば先生に褒められるだろう」という綿密かつ水溜りくらいの浅い考えからというのが一つで。もう一つが、児童向け雑誌に、当時の同い年くらいの児童が、国語の教科書に載っていたタンポポの生育に関する記事の間違えに気づき、それを先生に告げたところ、教科書の改訂にまで繋がったというニュースを読んで「オレも植物に関する大発見をして、それがえらい人に認められて、小学生にして植物学者になるのだ」というシロップの砂糖漬けくらいの甘い考えを持っていたことも、その一因でした。いやいや、”大発見”ってなんだよってところですし、学者になるには大学でお前の大嫌いな勉強と研究しなきゃならないよってところなんですが、夢見る少年だった私は明るい未来だけを見ていたのです。

 

それで、夏休み前半は、山や川などに行っては花をとってきて、百科事典に挟んで押し花を作るということをコツコツやっておりました。どうも、私には収集癖があったようで割とできたんですよね。そんなこんなしているころ、どういった経緯か忘れてしまったですが、ある時、同じクラスの女の子と一緒に花を取りに行くことになりました。おそらく、花の名前を調べにいった図書室で一緒になって、そんな話になったとかそんなところだったのだと思います。

 

私は彼女と一緒に花を探しに出かけ、丘の上に咲いた一輪の白い花をみつけた私は、それを彼女に手渡し「君のために咲いていた花だよ」と優しく話しかけた、ってなことはもちろんなく。こちらの気分は川口浩探検隊ですから。「レディーファースト」なんて言葉も知らなかったし。兎に角、山深くに入って珍しい花をとってきてやるってことしか考えていませんでした。そして、彼女のことは全く気にもかけていませんでした。むしろ、ライバルくらいに思っていた節がありました。

 

そんな調子で私がどんどん山の奥に行ってしまうものですから、彼女は不安になったんでしょうね。「帰ろうよ」と半べそになっていました。ですが、私はとにかく「世紀の大発見をするのだ」と息巻いてましたから、構わず奥に入っていきました。そうしたところ、彼女が本格的に泣き出してしまい、困った私は、とりあえずそこで植物採集を中止して彼女をうちまで送っていくことにしました。ですが、送っている道すがら、私は何を話してよいか分からず終始無言で、なんともいえない空気が流れていました。今考えれば、全面的に私が悪いのですから、ちょっとは慰めるとか、明るく振る舞うとかなんかすれば良かったんでしょうけど、そこまでの気遣いができなかったんですよね。彼女にはホント悪いことしました。

 

それからというのもの、しばらく彼女と会わなくなり、私の野心はすっかり冷え切って、自由研究も、それ以降、新しい花を取りに行くということもなくなりました。

 

夏休みも中盤に差し掛かり、エンジョイしまくっていた私は夏祭りの夜の出店に繰り出しましました。すると、りんご飴屋の前で、久しぶりに、その子にあったんですよね。彼女は朝顔模様の浴衣に真っ赤な帯をしめて、髪はポニーテールでした。まぁ、クラスの女の子にこういうの嫌なんですが、ちょっとかわいかったんですよね。私はちょっとドギマギしてしまったのですが、彼女の方は、山であった出来事をすっかり忘れているかのように普通に話しかけてきました。そして、唐突に、どういう意図だったのか分からないのですが、私にマーブル模様のスーパーボールくれました。まぁ、余ってて、いらないからだったのかもしれませんが私はそれが嬉しかったんですよね。

あの時の自由研究、その後どうしたのか、学校に提出したのかさえ覚えていないのですが、収集癖のある私は、彼女にもらったスーパーボールいまだに持っています。

 

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