サボりのお手本として「ヒロシのぼっちキャンプ」をみてる

今週のお題「サボりたいこと」

 

 

キャンプは苦手です。

食事は屋内で食べたいし。寒いのが苦手だし。夏場はやたらと蚊に刺されます。

そんな私が、最近、なぜかBS-TBSの「ヒロシのぼっちキャンプ」をかなりの高確率でみてしまっています。

 

キャンプに興味ない私が、あの番組みているのは、おそらく、サボっている感を楽しんでいるのだと思っています。サボりたい。なんだったら24時間365日、休みなくサボりたい。ですが、サボっちゃいけない時期というものあるような気がします。その、最もサボってはいけない時期の一つは予備校の夏季講習中かもしれません。

 

35年前の夏。私も大学受験を控え、大手予備校の夏期講習を受けていました。

今でも学習塾では「夏を制する者は受験を制する」「今頑張れないやつは一生頑張れない」「勉強のしすぎで死んだやつはいない」などのハラスメント・ラインを少し飛び越えた言葉が飛び交っているのでしょうか。当時の私は、競争社会に飲み込まれて友達を出し抜こうと機械の如く受験準備をしている同級生に嫌気が差して勉強に身が入らなかった、というのは表向きの理由で、本当は頭の中が常に「疲れた」「眠い」「サボりたい」でした。

そんな受験生の成績が良いわけはなく、私の模擬試験結果は常に超低空どころか地中に潜って測定できないくらいでした。

 

予備校のクラス分けは冷徹に行なわれます。公明正大。人間性、将来性、素行などに左右されず、成績順に上のクラスから順番に生徒が注ぎ込まれ、最後の最後、閉店間際のラーメン屋の残りスープくらいどうでもいい連中が行き着くところが私立理系の初級クラスでした。当然、私も、チャーシューの残りかすくらいの感じで そこにいました。

 

そのクラスでも、最も人気がなかったのが物理の講義でした。あまりに人が集まらないので、教室を半分に仕切っていたのですが、これが良くなかった。というのも講師がワキガで。「真夏」「密閉空間」「ワキガ」。この3アイテムが揃うと、人が死ぬレベルの状況となります。エアコンが効いているとはいえ、汗をかきながら板書している講師のポロシャツの脇からは、えぐい匂いがダダ漏れし「脇に脱臭剤はさんどけ!!」と叫びたくなるくらいの異常事態となります。

 

その目に染みるニオイにやられながら、とにかく死ぬ思いで思いで板書をノートに書き写し、50分の苦行を終え、ほっとしたところで横を見ると、隣の女の子も鼻と口元をハンカチで押さえていました。眉間に皺を寄せてノートを必死にとっていた彼女と目があったので、

「参ったね」

と声をかけると、彼女は、顔面蒼白。今にも死にそうな顔をしていました。

「もうだめ。。外に出ようよ」

全く同感でした。

真夏で外はムッとする暑さだったのですが、教室内とは雲泥の差。深呼吸しながら、二人でフレッシュな空気を肺に入れ込みました。

 

今でも、その傾向あると思いますが、当時は理系を選択する女子というのは極端に少なく、クラスにも2、3人というところでした。物覚えが極端に悪い私でも、彼女の顔は記憶していましたが、話すのは初めてでした。

彼女から次の講義予定を聞かれ、「英語」と答えると、「ついていけてるの?」ちょっと小馬鹿にした感じで返してきたので、少しムッとしながら「半分くらいしかわからない」と嘘をつきました。(本当は1割もわかっていない)

「私もついていけてないから、サボって、海を見に行こうよ」と誘われた時には、既に彼女に主導権を握られていました。当時は、まだ勝間和代さんの「断る力」も出版されておらず、断るスキルを持っていなかった私は、言われるがまま海に行くことになってしまいました。ちなみに「断る力」は今後も読む予定はありませんので、これからも断れない人生を送りそうです。

 

海に向かう路面電車の開け放たれた窓からは気持ちの良い風が入ってきていました。私達はその中で、お互いのことを少し話しました。彼女は隣の女子校に通っていて陸上部で、国語が苦手で私立理系一本に絞るつもりなどと話しているうちに海近い駅についていました。私たちは自販機で買ったブリックパックの乳酸菌飲料を飲みながら、防波堤に座って将来のことについてなどを語り合りあいました。

 

そんな風にことあるごとに予備校をサボっていた私は、翌春に、当然の結果として不合格通知をたくさん受け取るという形で因果というものが本当にあることを学びました。

それで改心すれば良いものの、サボり癖は治らず、特に目立った成績のない、うだつの上がらないサラリーマンを今もやっています。

 

GW明けの今週、同僚の一人が心の病にかかって暫く休職するという話がありました。リモート会議では、いつも前のめり気味に話す彼に何があったのかは私にはわかりません。そんな人たちに対して、SNS界隈では「あなたはこのタイプ」「原因はこれ」「ポジティブになるための10の方法」なんて予備校模試の模範解答くらいに正確無比な答えで溢れかえっているようです。それで救われる人も多いのかもしれません。ですが、「少しはサボって、キャンプにでも行ってくればいいなんて簡単な事じゃないんだよ」って思っている人も相当数いるのではないかと想像しています。私は休職する彼が何をしたら良いかなんて分かりませんし、かける言葉も知りません。ですが、彼は好きなだけ休めばいいし、休むことに疲れたら戻ってくればいいと思っています。人生って思っている以上に長いようですし。

 

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