私以外の優しい人々

今週のお題「最近あったちょっといいこと」

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今思えば、ヨシオ(仮名)はゲイだったのかもしれない。

 

と思ったのは、「11人に1人はLGBT層」という記事を読んだからです。

LGBT層のうち、ゲイの方が、どのくらいの割合となっているのか分かりませんが、ざっくり男性100人に1人くらいは少なくともいそうな気がします。

残念なことに、私は社会人不適合者なので極端に知り合いが少ないです。

それでも、人生振り返れば100人以上は知り合いがいます。(多分。。)

そうすると、誰か一人くらいは該当者がいても良さそうですが、どうにも心当たりがなく。

その中でも可能性がありそうと浮かんできたのがヨシオでした。

 

ヨシオは高校の時の同級生です。

私が通っていた高校は男子校で女子はいませんでした(当たり前だ)。

ヨシオは動きや喋り方が、ちょっと女性っぽく、友人からストレートに「オカマ」なんて呼ばれていました。

(今、そんなこと言ったらSNSで袋叩きでしょうけど)

ヨシオはそれをサラリと受け流し、気にしている風でもありませんでした。

ごく普通に受け止めている感じがしていました。

私は、ヨシオがそんな振る舞いをしているのは一種のギャグのようなものだと思っていました。

男子校のノリみたいものだと思って。

 

授業前の朝、ヨシオが登校すると、「おはよー」なんて、頻繁に私にくっついてきていました。

そして、ボディタッチも激しかったので、他の友人から、

「なんだよ。お前ら、付き合ってるのか?」

と言われたりもしていました。

私は、ヨシオが私にやたらと近づくのは冗談のようなものだと思っていました。

ですので、別に気にしてもいませんでした。

男子校のノリみたいものだと思って。

 

そんなある日、なんとなく私の機嫌が悪い時があり、ヨシオのボディタッチが鬱陶しく思う日がありました。

ティーンの時、そういう、とりたてて理由もない訳のわからない怒りが充満している日って、なんかあったんですよね。

最初は「やめろよ」なんて言っているだけだったのですが、そんな不機嫌バイオリズムだったもので、思わず、ヨシオに向かって

「シャキっと男らしくせんかい!」

と怒気を含んで言ってしまいました。

その時の、ヨシオのビックリしたような、なんともやるせないような顔。

今でも忘れられません。

”なんか言ってはいけないことを言ってしまった”ような雰囲気を感じました。

それ以来、ヨシオとは、なんとなく疎遠になり話もしなくなりました。

 

卒業式で遠くで彼をみかけて以来、彼とは会っていません。

今頃、どこで何をしているのやら。

 

先日、横断歩道で信号待ちしてましたら、道路向こうに若い男の二人組がいました。

一人は、全身黒ずくめで、いわゆる今時のイケてる風でした。

もう一人は、ニット帽を目深に被り、ダウンジャケットを着ててもわかるくらいの細身の体をしていました。

その二人、ぱっと見はどこがという感じではないのですが、遠目でも、なんとなく違和感を感じる雰囲気がありました。

後で気がついたのですが、二人の距離が妙に近かったのです。

そして、ふと見ると、手をしっかり繋いでることがわかりました。

私は、一瞬ドキッとしたのですが、

「あぁ、そういことね。まぁ、今時はね。そういうこともあるよね。」

と思い、二人を目線から外しました。

 

そして、少し待っていると信号が青になり、私は横断歩道を渡り始めました。

その二人も歩き出し、否が応でも彼らが目に入ってくると、私は自分のダメ人間ぶりを思い知らされる事になりました。

 

ニット帽の彼が知的障害者だったのです。(おそらく)

彼は、何か少し怯えたように、あたりを伺いながら歩いていました。

黒ずくめの男子は、ニット帽の彼を守るように前に出て彼の手を引いていました。

 

彼らが、兄弟なのか、友人なのか、あるいはボランティアの関係なのかは、もちろんわかりません。

いずれにしろ、まず私がダメなのは、私は彼らをゲイカップルと勘違いし嫌悪感を抱いてしまったことです。

仮に彼らがゲイだとしても、私の生活には1ミリも関係がないのですから、私が嫌悪感を持つことはおかしい。

そして、男性二人が手を繋いでいると、そういう目でしかみていない自分の了見の狭さは、どんな言い訳も通用しないくらいダメな性質です。

 

二人は、私の人間性の低さを表に炙り出し、気づかせてくれました。

それと同時に、こんな優しい景色もあるのだと嬉しい気持ちにもなりました。

捨てたもんじゃないなって。

正しいことを正しくやっている人がいることを、若い二人に教えてもらいました。

人知れず、優しい行動に世界は満たされているのかも知れません。

二人に幸せが降りてくるといいなと思っています。

 

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