コレクションをやめるとき

今週のお題「わたしのコレクション」

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ゆるキャラや、マイブームの産みの親である、MJこと、みうらじゅん氏は、一般人からはガラクタと思えるパンチのきいたモノを長期に収集されていることで有名ですよね。

とある記事で、インタビュアーから

「長年に渡りコレクションをして飽きたりしないのですか?」

と聞かれた、みうら氏は、

「飽きているに決まっているじゃないですか。そこで踏ん張って、“飽きてないふり”をしているのです」

と答えられていました。

みうら氏の言葉は、いつも優しい。

 

私のコレクションには、飽きてしまって収集のモチベーションがなくなり、やめたものもありますが、長年収集していたにもかかわらず、これといった理由もなく、いつやめたのかわからないものもいくつかあります。

ガムのおまけシール、プロ野球カード、消しゴム、鉛筆などは、2、3年集めていたのですが、飽きたわけでもないのに、いつの間にかやめていました。

 

一方、やめた時期や理由ががはっきりしているコレクションもあります。

その一つがキーホルダーです。

集め始めた時期は覚えていないのですが、子供時分からコレクションしており、中学生になった頃にはかなりの数になっていました。

そのキーホルダー・コレクション熱が頂点に達していた中学2年生の春先、

私は、修学旅行として九州に行くことになりました。

私が通っていた中学校では、受験を配慮して、修学旅行は3年次ではなく、2年生3月にいくのが恒例となっていました。

その時、私にはクラスに気になる子がにいました。

 

少しウェーブのかかったセミロングの髪に切長の目。

細い足に真っ白なソックスが似合う女の子でした。

私は彼女と、部活のこと、進学したい高校のこと、将来のことなどを二人で話をしたいと密かに思っていました。

ですが、意識すればするほど恥ずかしくなり、話しかけることができませんでした。

遠巻きになんとなく彼女を見ているだけだったのですが、その雰囲気を彼女が感じたのか、なんとなく彼女も私を意識しているようでした。

 

そんな思いを心にうっすら残しながらの修学旅行中、私はコレクションのため、阿蘇、霧島、日南などの行く先々でキーホルダーのみを買っていました。

若さは、時に、このような痛い行動として現れてきますよね。

この私の変な行動はクラスでも知られるものとなり、彼女にも伝わっていたようでした。

 

修学旅行の最終日、停車中のバスで私がまったりと座っていると、彼女が席を探すついでという感じで、私に近づいてきました。

そして、

「はい。これあげる」

と言って、キーホルダーを差し出しました。

多分、どこかの土産物屋で私のために買ってくれたのだと思います。

とてつもなく嬉しかったのですが、突然でもありましたし、私は、そんなシチュエーションには慣れておらず、喜びの表し方を知りませんでした。

そして、照れもあり、

「あぁ。どうも」

と、そっけない感じを装ってしまいました。

気持ちがちゃんと伝わるように、はしゃぐべきでした。

そして、男友達に見つからないように、キーホルダーだけを、さっと受け取りポケットにしまってしまいました。

 

バスが走り出して、私は、ポケットにしまったキーホルダーが気になって仕方ありませんでした。

とにかく早くもう一度しっかり見たかったのですが、それを必死に抑え、しばらくは何もなかったように振る舞っていました。

そして、男友達の気が別なところにいった一瞬のチャンスを逃さずに、改めてキーホルダーを取り出しました。

彼女がくれたキーホルダー。

心躍らせながら、じっくり眺めると、タグに黒バックの赤文字で

「仏恥義理」

と書かれているのが見えました。

今の人にはわからないと思いますが、これで「ぶっちぎり」と読みます。

私は、そっとキーホルダーをポケットに隠し、何事もなかったように振る舞いました。

 

どうやら、彼女は、その頃に流行っていたヤンキー文化にどっぷりはまり込んでいたようでした。

私はというと、当時、斜に構えたところがあり、

「ヤンキーはダサい」

と強く思っていました。

それが溝になったのか、以来、彼女とは疎遠になりました。

そして、キーホルダーのコレクションもやめてしまいました。

 

中学生の感性というのは、自分が見ている世界が全てで、他は間違っているくらいに思っているものだと思います。

私も相当に勘違いしていました。

自分のセンスが一番と思っていましたし、ちょっとスカしたようなものが良く、それ以外は自分の目線から排除したいと思っていました。

あの頃の私は、みうらじゅん氏のような包容力を持ち合わせていませんでした。

色々なことが残念な時代です。

 

コレクションはしなくなったものの、今でも、集めたキーホルダーは捨てずに実家の倉庫に残してあります。

実家に帰ると、ごくたまに、集まってくれたキーホルダーたちを眺めることがあるのですが、その中でも彼女がくれた「仏恥義理」キーホルダーの赤文字は、今も変わらず箱の中で「仏恥義理」で目立っています。

 

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